(c)NASA/JPL
皆様いかがおすごしであろうか? 自称木星マニアの野地である。
話に脈絡があったとしても、自分が木星マニアだと話をふると大抵の人は「……?」という反応をする。そりゃそうだ。
「ドラムが好きです」とか「コーヒーが好物です」とかなら相手も話を返しやすいが、「木星って素晴らしいと思いませんか!?」って言われても、どんな返答をしていいのか分かるわけがない。
そんなこんなで、この話題を出すのは中学2年生辺りで卒業したのだが、この前うっかりとその話題を人にふってしまい、案の定ポカンとされた。
しかし、情報にはそれぞれ、様々な伝達方法に対する向き不向きがある。音楽の素晴らしさを伝えたいならオーディオデータや実演奏を聴いてもらうのが一番だし、契約とか法律が関わってくる難しい話だったら紙に印刷された活字が最も都合がいい。
そう、少なくとも、木星の良さを語るのであれば、言葉で喋るより、web上の記事にした方が良い(気がする)のだ。
ということで、最近はweb技術と音楽に関する話題ばかりだったこのblogに新たな血を入れる意味も兼ねて(?)、今回は木星の魅力を個人的にまとめたモノを記事にしてみたいと思う。
この記事を読めばあなたもきっと木星のファンになること必至である。
ちなみに、自称木星マニアの自分はこの前夢に木星が出てきた。そして、意気揚々と降り立った液体水素の海で死んだ。だからどうした。
魅力その1:馬鹿デカイ
大は小を兼ねる、と言うとおり、基本的に人間は大きいモノが好きだ。
水金地火までの所為地球型惑星(主に岩石でできている)に比べ、己の名を冠した木星型惑星(主にガスでできている)である木星は余りにも大きい。故に魅力的である。
太陽系の主役は言わずもがな、太陽本人であることは間違いない。
地球及び人間に対しても、エジプト神話等、太陽を最高神、もしくは特別な象徴とする宗教は多く、宗教が絡んでなくとも昼と夜(ついでに季節)等時間の概念を生み出しエネルギーを供給し、質実ともに影響力ぶっちぎりナンバーワンの天体だ(当たり前だ)。同じく、地球から見た場合のみ、月も似たような立ち位置にいると言えるだろう。
しかし、それら太陽&月を特別枠として思考からハズすと頭角を表すのがこの木星だ。
赤道面直径は142,984 kmで地球の約11倍、体積に至っては、1.43128×10の15乗キロ立方メートル(1,431,280,000,000,000 kg。日本語風に言うと、1431京2800億キロ立方メートル)で、地球の1600倍ある。
この動画のオイシイところは土星に取られてしまっているが、もし月の位置に木星があったらこうなる。馬鹿デカイ。
さて、それに比べ質量は 1.8986×10の27乗kg(1,898,600,000,000,000,000,000,000,000 kg。日本語風に言うと、1898じょ(漢字がでない)6000垓)と、地球の318倍であり。比較的密度は低い。
なんだ、案外中身はスカスカじゃないか、と思うかもしれないが、太陽系総質量の99.85% を持っていってる太陽を除けば、残りの少なくとも60%以上の質量は木星自身である。
太陽に霞みすぎている感は否めないが、太陽以外の太陽系ファミリーの2/3を持っていってる木星はやっぱり馬鹿デカイと言えるのだ。
大地がない
そんな木星の地に降り立って、地球とはまるで違ったスケールを楽しみたいのは山々なのだが、木星には山などない。というか、地面がない。故に魅力的である。
地面がないなど、地球に生まれ育った人間には想像しがたいことだが、木星と、土星、天王星、海王星には地球のような硬い地面は存在しない。
一応、固体部分はあるのだが、地球のように明示的な境界線はなく、中心に進むほど段階的にガス(気体)→海(液体)→核(固体)と変化していく。
それでも、海の下の固体部分まで潜れば海底を歩けるんじゃねーの? と思うかもしれないが、そんなに木星は甘くない。
まず、海と言ってもそれは水ではなく、水素の海である。
水素ふたつに酸素がひとつくっつけば水じゃん、似たようなものだろう、と思うかもしれないが、この差は余りにも大きい。
地球の表面における気圧(大気圧)を1とした場合、海は10m潜るごとに約1気圧増えていく。
地球の海で最も深いとされるマリアナ海溝の最深部が水面から10,911mであるので、地球の海における最高気圧は1091気圧程度ということになる(人間が条件を整えて素潜りした場合、耐えられるのは46気圧くらいまで)。
さて、木星の海はというと、その最深部、個体と液体の境界(と定義できる辺り)での気圧は3600万気圧である。というか、温度は2万度ある。
普段気体の水素が液体になるためにはそれなりの気圧が必要なのだが、その「それなり」が人間には辛すぎるのだ。
そもそも、人間が行くには過酷すぎる
ちなみに液体水素の海を諦め、ガスの部分を飛行船的なもので漂おうとしても、段違いの濃度を持つガスによる摩擦でしょっちゅう雷が起き、その威力は平均して地球の1万倍。
運良く雷を回避しようとも、極地以外では常に時速360kmの嵐が吹き荒れている(地球の観測上、瞬間風速が最大である第2宮古島台風でも瞬間時速307km)。
(c)NASA/JPL
実は大きい目のような模様に見える大赤斑の正体も台風で、地球が2~3個分すっぽりと収まってしまう大きさの上、少なくとも350年前から存続している。
関係ないかもしれないが、太陽系惑星の中で一番でかいくせに木星の自転速度は一番早い。固体の表面ではないので、観測上、自転速度が緯度毎に違う(縞模様に見えるのも、この表面の自転速度が違うことが原因のひとつ。しかもこの縞の正体である風、吹いている方向が交互に東西逆である)のだが、最も代表的な部分で一日が約9時間55分。早すぎる。
もう上陸することは諦め、木星からちょっと離れてみよう。木星はまだ容赦しない。
天体は磁場を持っているが、地球のそれは磁気圏として60000km、地球直径の10倍まで広がっている。
では木星の磁気圏も木星直径の10倍程度(140万km)くらいかと思いきや、太陽方向には数百万km、反対方向には6億5000万kmの距離まで広がっている(これは、土星の軌道をも超えている)。
この強力すぎる磁気圏は衛星イオ(後述)から放出される物質等を加速させ、高エネルギー粒子が放射線を乱射させている空間を作り出す。
実際に木星へと行く際に一番問題になるであろう問題がこの放射能であり、人間が近くを飛ぶのはまず不可能であると言われている。
人間では近づくことすらできない木星。故に魅力的である。
木星と度が過ぎるほど愉快な仲間たち
(c)NASA/JPL
月を除けば今、まさしく地球人を一番騒がしている衛星エウロパ
木星は魅力的すぎる(正確には周囲への影響が強すぎる)ためか、現時点で衛星が67個発見されている。
取り巻きが多いのは太陽系のアイドルたる証左でもあるわけだが、地球にフォローを入れておくと、地球の大きさに対して月は衛星としては不気味なくらい大きいものらしい。
地球の衛星である月の直径は地球の1/4程度だが、この比率は太陽系の惑星+衛星の中で一番大きいものである。
太陽系には150個程度の衛星が存在するが、この中で月の大きさはなんと5位。一人だけではあるものの、地球には絶対的なファンが居るのだ。
しかし、ご存知の通り、そんなに木星は甘くない。
月の大きさが5位と健闘しているものの、1位・3位・4位・6位の衛星は全て木星のものである(2位は同じ木星型惑星の意地を見せた土星のタイタン)。
取り巻きすら太陽系衛星界のスーパーアイドル達である木星。故に魅力的である。
さて、この4つの衛星こそ、木星を語るときには外せない、かの有名な「ガリレオ衛星」たちである。
木星に近い順にイオ・エウロパ・ガニメデ・カリストと並んでいるが、流石木星の取り巻きだけあって、それぞれがかなり個性的な衛星である。
まず、イオは太陽系の中でも最も活発な衛星で、なんと火山活動をしている。
そんなことをするエネルギーがどこから来るのかというと、イオは木星の一番内側で回っているため、木星から受ける潮汐力が凄まじいのと、イオの外側を回るエウロパの重力がさらにイオに襲いかかる。結果、しょっちゅう伸び縮みしているせいで星規模の摩擦熱が起こり、火山活動をするまでに至るのだ。不憫なやつである。
次にカリストだが、この星はイオとは対照的に、非常に活動しない衛星である。
普通、星は形成したての熱い時期に内部対流を起こし、中心に安定した重い物質(鉄など)が集まり、核を形成するのだが、ガリレオ衛星の中では木星から一番距離が遠かったために、早々に冷めてしまい、内部物質が均一のまま残ってしまった。おまけに地表も静まり返っているため、ガリレオ衛星の中でも最もクレーターだらけである。でも、やる気がないようで、衛星大きさランキング3位。ちゃっかりすぎる。
次にエウロパ。ガリレオ衛星の中では一番小さい星なのだが、今、太陽系の中で一番注目されている衛星と言っても過言でない。水の海がある可能性が高いのだ。
海といえば、生命が生まれるために適した環境であるのだが、エウロパが持つ熱エネルギーで、地表部分の氷の下に、地球のそれと似た海が存在する可能性が高いというのだ。無論、太陽の光は地球と比べ僅かな量ではあるし、当の木星が放射能を撒き散らしているので、まんま魚のような生物は期待できないが、微生物や深海生物のような生物が居る可能性は否定できない。今、ある意味太陽より熱い星である。
そして最後に、衛星大きさランキング1位に輝くのがガニメデである。
エウロパとカリストの中間的性質を持つこの星、衛星という区分のくせして、惑星である水星より大きい。衛星としては反則級の大きさを持つこの星だが、最近この星の地下にもエウロパと同じく、大量の塩水がある可能性が高いことが分かってきた。というのも、なんとガニメデの地表は水の上に浮いている状態で、低温の極地で成長し厚くなった部分が重みで赤道地点まで移動するという信じがたい痕跡が観測されたのだ。大きいくせに、地表だけ回転させるという離れ業をやってのける、とんでもない奴である。
木星が個性豊かなだけに、彼らまで個性的なガリレオ衛星。彼らもまた魅力的である。
まとめ
長々と木星について書いてみたが、いかがだっただろうか?
ビジュアル的にはとなりの土星もかなりの美人(アクセサリーの使い方に騙されてる可能性大)だが、木星もちゃんと知っていれば超個性的な星であることが分かったと思う。
しかし、その強烈な個性故に、探査機は内部まで進めず、人間が近寄るなどもっての他であるため、未だ謎の多い惑星であるのも事実である。
だが、人間がそうであるように、全てが分かり易い性格であるよりも、多少ミステリアスであった方が好奇心を煽る魅力がある。
自分が生きているうちに一体どこまでが分かるのか見当もつかないが、今なお、太陽系のニュースは尽きることがない。
自分はただ望遠鏡を覗くことぐらいしかできずとも、未来のニュースを想像しながら木星を見てると、なにか心躍る気がしてならないのだ。
あなたも、何か太陽系でお気に入りの星を見つけて、心踊ってみてはいかがだろうか? ロマンチストと言われるかもしれないが、彼らは広大な宇宙のなかでは超身近な故に、話題に事欠かない、我々を飽きさせないスター達なのである。
参考資料
JAXA 宇宙情報センター / SPACE INFORMATION CENTER :木星
木星 – Wikipedia
日本惑星協会 惑星を知ろう 木星