1:37 AM投稿記事の長さ:日本国憲法 × 0.5個 くらい

最近脳にキてる音楽 その3:Primus/”Tommy The Cat”


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皆様いかがお過ごしであろうか? 最近ドラム以外の楽器にも興味が出てきた野地である。

楽器に興味が出てきたと言っても、新居を契約した時に後出しで「この物件の要項には書いてありませんでしたが、大家さんの希望で楽器禁止ということで……」と言われてしまい、家で練習できそうな楽器にも手を出すことは難しくなってしまった。まあ、もともとアパートの時点で楽器の練習は無茶かもしれないが。

実は、今一番好きな楽器はドラムであるものの、バンドがやりたい! と思い始めて一番最初に想像していた自分はベーシストだった。

ギターやボーカルといった花形パートは自分には似合わないという確信があったし、キーボードはピアノを習ってる人に一生勝てないと思っていたため、自分がやるべき楽器は自然とベースかドラムの二択になっていたのだが、いい意味で奇妙な立ち位置であり、変態という言葉が一番似合いそうであるベーシストという立ち位置に憧れたのである(実際は、それ以上にボトムを支えるという職人のような役割も大きいのだけれど、そこはドラムにも通じるリズム隊の運命だ)

そんなこんなで自分にとってベースはドラムの次に愛着のある楽器なのだが、前述の通りというか、自分の好きなベーシストにはやっぱり変態と呼ばれる人が多い。

ベーシストなら誰もが知ってるであろうベース界のスーパースターヴィクター・ウッテンや、いとも簡単にタッピングや早弾きをするMR.BIGのビリー・シーン、ドンシャリサウンドでもはや打楽器と化したベースのパイオニアであるKornのフィールディ、ありえない速度で複雑なリフを引き倒すカンニバル・コープスのアレックス・ウェブスターなどなど、ザッと挙げただけでも、変態という名のふさわしい人ばかりである。

さて、そんなベーシストの中でも、最近とりわけお気に入りの変態さんが一人居る。今回の記事の主役であるPrimusを率いる中心人物でベーシスト/ボーカルのレス・クレイプールだ。

そんな彼の魅力が怪しく爆発するPrimusの代表曲、”Tommy The Cat”を最近脳にキてる音楽シリーズ第三弾となる今回の記事で紹介していこうと思う。


1991年の曲であるので、自分より二歳年上である。時代を超えて愛される曲であることは間違いない。

Primusというバンド

Primusというバンドは基本的には中心人物であるレス・クレイプールが中心となって動いているバンドであると見て間違いない。

レスは中学生のころ、何故か唐突に楽器をやりたいと思い始め、最初はトランペットに挑戦してみたのだが、彼曰く出っ歯のために断念、それ以外の管楽器も触ってみたものの、すぐに飽きてしまったらしい。

そんな中、最終的に行き着いたのがベースだったらしいのだが、当初、彼はベースとギターの違いについてあまり理解していなかったらしく、ただ単にベースの方が音が野太くてデカイといった理由からベースを始めた。この時点で天才の片鱗が見え隠れしている。

その後、レスは地元の様々なバンドで活躍しながらも、ラッシュのベーシストであるゲディー・リーや、スタンリー・クラークらに影響を受け、メキメキと腕を伸ばしていった。

ここで注目すべきことは、彼の所属していたバンドはそれぞれ演奏していたジャンルがバラバラであり、レスは若い頃からジャズやメタル、ファンク等様々なジャンルを網羅してきたということである。

最終的に自分が中心となって結成することになるPrimusのジャンルは一応ミクスチャーということになっているが、そのミクスチャーという言葉に恥じないほど、様々なジャンルのエッセンスがごった煮にされた音楽性は、彼のそういった経験が元になっていることは間違いないだろう。

そして、レスが周りに居る誰よりも上手いベーシストになる頃には、彼は独自に書き溜めた楽曲を世に放ちたいと考え始めた。こうして生まれたのがPrimusである。

Primusはベース、ギター、ドラムといった至極シンプルなスリーピースバンド(ゲストで他の楽器がはいることも多いが)であるのだが、ベースがとにかく普通ではない。

一般的なバンドにおいてベースはルート音(コード進行における最低音)を明確にし、リズムの流れを作るのが仕事であるが、Primusでのベースは間違いなく主役の役割を担っている。スラップを多用し、時にはコードを奏でてみたり、アーミングやワウまで使いこなし、楽曲の中心要素をベースリフが作っているのがこのバンド最大の特徴だ。

さらに、メインボーカルはただでさえ変態的ベースラインで目立ちまくっているレス本人であり、おまけに彼の歌声は間違っても美しいとか格好良いと形容されるものではなく、まるでふざけているかのようなダミ声であるのが実に味わい深い

メンバーは彼以外にギタリストとドラマーがおり、流動的ではあるが、現在は黄金期のメンバーであるラリー・ラロンデ(g)とティム・アレキサンダー(dr)の二人が所属している。

レスの独特なバカテクさ加減が目立つバンドではあるが、この二名ももれなく変態的なテクニックの持ち主で、Primusの楽曲により一筋縄ではいかない魅力を持たせているのは流石だ。レスはソロでも精力的に活動しているが、彼らが合わさってこそPrimusである。

今回の一曲「”Tommy The Cat”」

日本語で音だけを抜き出して書くと「セイベベ」といったフレーズが耳に残る楽曲である。

歌詞の内容は極々バッサリと説明すると、盛りのついたオス猫である「トミー・ザ・キャット」が”Say baby do you wanna lay down by me”(ベイビー、俺を欲しいと言いな)と語る内容だ。みなさんもさあ一緒に、セイベベ。

さてこの曲、特徴的なのが、ギターは目立つところだけ目立って、他の部分で全くなにもしていないところである。しかも、ベースすら鳴っていない部分も多く、「空白」を感じさせる部分が多い。

だからとってこの曲が大人しいものかといえば全くそんなことはなく、むしろ小気味よい位に騒がしい曲である。

なぜそんなことがありえるかというと、一つはスリーピースというバンドのほぼ最小単位である構成にとって命取りである「メリハリ」の要素がダイナミックな点があげられる。

まず、スリーピースにおいて一番音が多く重なるのは、単純に考えてドラム・ベース・ギター・ボーカルの全てが同時に演奏されているときである。しかし、普通の楽曲において、これら4つのパートが同時に鳴っているのは普通のことであり、珍しいことでも何でもない。つまり、普通の論法で曲を作ろうとする時点で、スリーピースバンドが出せる最大の音の重なりを多用してしまうことになるのだ(もちろん、音数を少なくする、テンポを半分や倍にする、エフェクトをかける、音量をいじる等、色々な調整でメリハリをだしてはいるが)。

改めてこの”Tommy The Cat”を聴いてみよう。意識しないで聴くと気づかない人も多いだろうが、前述の4パートが全て重なっているのは最後のサビ部分だけである。

うまいことボーカルとギターという花形が交互に入替わり、静かなパートは軽妙なノリを持たせつつ、ドラムとベースが鳴っているというメリハリがこの楽曲を賑やかで飽きないものにしてるのだ。

そしてもうひとつの点がなんといってもレスのベースプレイである。

ギターではなく、ベースがメインでリフで、どこか打楽器的なスラップが曲のノリを支配している。しかし決してファンク一辺倒というわけではなく、ジャズやメタルをも感じさせる展開・音が既存の曲とは一線を画するのが大変面白い。

ドラムやギターもベースに対して大人しく振舞っているように聴こえるかもしれないが、実際は結構えげつないことをやっているのがいいスパイスになっている。

そして、ボーカルが非常にいい意味で酷い。早口でふにゃふにゃのダミ声が最高である。

格好良い、かわいいはバンドをやっている誰もが求める条件のように思われるが、実際、音楽というのは格好良い、かわいいなんかよりも楽しい、快感などの方がよほど重要だ(あくまで持論(笑))。

この曲のボーカルはリスナーの耳に残り、笑わせ、しかしノリに絶妙にマッチしているというボーカルの少数派的正解であると言えるだろう。

また、この曲、CD版ももちろんいいのだが、真価を発揮するのはライブの時である。是非、やりたい放題遊びまくるレスと愉快な仲間たちを楽しんでいただきたい。


ツッコミどころのオンパレードであるが、それこそバンドマンの真骨頂である。

まとめ

自分の好きな楽曲はクセのあるものが多いが、他人にススメやすい割に、クセの強いのがこのPrimusである。

普通の人に聴かせてもとりあえず笑ってくれるし、音楽好きのマニアックな人に聴かせても目を丸くして喜んで貰える。

実は、そういう、変なことを全力でやりつつも、多くの人から愛される、ある意味でのキャッチーさを持ち合わせているのがPrimusの魅力なのだろう。

皆さんもレスのように、たまには茶目っ気をだして生活してみるとほんのり人生が楽しくなるかもしれない。

少なくとも自分が昔、ベーシストに憧れていた時の理想像はここにある。変態とは、時に最強なのだ。

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